一級建築士になりました!(๑`·ᴗ·´๑)

はじめに

去年の10月に二度目の正直で設計製図試験を受け、クリスマスの日に一級建築士試験に合格したのが分かり、新年早々に面倒な手続きの免許登録をしてから、長ーーーーーーーーーーーーーーーーーい事待たされること数ヶ月。ようやく免許証が手元に届きましたので、この場をお借りしてご報告と自己満足と資格勉強で溜まったストレスの解消のためにブログを書かさせて頂きたいと思います。ご容赦ください。

 

一級建築士になりました

で、本題ですが、私事ではありますが一級建築士になりました。

この前の12月25日に有給取り、合格発表サイトで自分の番号があるのを確認して、狂喜乱舞して紅茶を床にぶちまけた事も忘れていた、フキノトウが顔をのぞかせ始めた暖かい春の日に、レターパックで免許証明証なるものが届いたことで、晴れて自分も一級建築士になりました。

近年では、免許証は賞状ではなく、こういうマイナンバーカードみたいなチップの入ったものが来ます。もちろん「免許証」というものが来ることは凄くうれしいですが、自分の今までの努力がクレジットカードサイズのプラスチックの薄い板に収まってしまうと考えると、賞状と比べて威厳や尊厳的なものが少なくて物足りなく感じてしまうのが正直な感想です。でももちろん今までの努力がカタチになって有資格者の証が手元にきただけで本当に嬉しいです。

認定番号は39万の位でした。引退された方なども当然含まれていると思いますが、これまでに39万人もの人が一級建築士になっているのかと少し驚きました。明日から使える無駄知識をお伝えすると、実は一級建築士を持っていたことで有名な第64代内閣総理大臣の田中角栄は「16989」番目らしいです。閑話休題。

 

一級建築士試験とは

一級建築士はそれぞれの都道府県の知事が認可をおこなう二級建築士とは違い、国土交通大臣が認可をおこなう国家資格です。

一級建築士を持っていると住宅のような比較的小規模の建築物だけでなく、病院や商業施設、オフィスビル等の大規模な建築物の設計や工事監理を行う事が出来ます。簡潔に言うと“ 二  級  建  築  士  と  違  っ  て ”用途や規模に関係なく、どんな建築物でも設計・工事監理が出来ます。

肝心の一級建築士試験ですが、一次試験の学科試験と二次試験の設計製図試験があり、令和5年度の合格率が学科試験が16.2%、製図試験が9.9%で、最終的に受験者の約9割が落ちてしまう凄く難易度の高い試験です。国家資格難易度ランキングだと9位で、気象予報士や行政書士より上で税理士の1つ下くらいらしいです。無事に合格出来てないとこんなこと怖くて調べられないですね。

自分は仕事しながら週40時間の勉強を、毎回半年から一年くらいしていました。

休みは丸々2日つぶれるわ、残業して帰ってから3、4時間勉強させられるわ、時間が足りないから朝起きてからと昼休みにも勉強するわ、それで体調崩すけど有給使ったり病院行ったりすると精神衛生的に良くないし現実逃避したいから、じゃあ仕事してるわ、みたいな生活をしてました。もちろんその期間中は友人たちと遊びに行ったり、家族に会いに行ったりなんかもしていません。

今は美容院へ髪を切りに行くときや、オイル交換でディーラーへ行くときに参考書やテキストを抱えて持って行かなくていいことに嬉しさを感じます。一級魔法使い選抜試験や草むしり検定5級に比べれば簡単な試験なのかもしれませんが、高校受験や大学入試、センター試験とは比較にならないくらいの大変な試験だったなと個人的には思っています。

 

学科試験(一次試験)

学科試験は「計画」「環境設備」「法規」「構造」「施工」の5科目の試験で、125点満点のマークカードを使う選択式の試験です。

一概に建築と言っても、その中でいろんな分野が分かれているので、単に覚えることが多いだけでないのが学科試験の難しい所だと思います。聞いたこともないようなヨーロッパの片田舎の16世紀の大聖堂のを調べ、空調機器や給排水・音響や色彩の種類や仕組みを覚え、くそ難しい日本語の法律書とにらめっこして、ギリシャ文字いっぱいの構造計算をして、現場の鉄骨鋼材の溶接方法を学ぶような感じです。自分は凡人なので、それぞれの事柄をちゃんと理解して整理してアウトプットできるようにしないと本当に頭のキャパが持ちません。

この試験だけで受験者の8割以上が落ちるのですから本当に恐ろしい試験です。自分が合格した時の詳しい点数は覚えていないですが、環境設備と構造の力学計算は満点、法規は3点ミス、施工は足切り点ではないけど割と悲惨、というのは覚えています。

もちろんこの一次試験を合格しないと二次試験にはいけません。

 

設計製図試験(二次試験)

設計製図試験は、試験時間が6.5時間かかる試験です。試験が開始された後にA2サイズの紙に書かれた課題文を読み、試験が終了するまでに、課題文の要求と法律を守ったプランを考え、それをミスなく時間内に作図しきらないといけません。

まず課題文と読み、エスキスと呼ばれる計画プランを完成させるまでで3時間近くかかります。

そしてその後、いざ作図をするぞ!の前に「記述」と呼ばれる作文をA3用紙にみっちり書かされます。場合によってはここに矩計図(断面詳細図)を描かないといけません。試験のメインが「作図」と思いがちですが、「記述」もかなり配点が大きく、作図は完璧でも記述の文章が的外れだったり、図面との不適合なんかがあると普通に落とされてしまいます。時間も1時間程度で終わらさないと後の作図の時間が無くなってしまうので、本気で文章を書きます。普段PCやスマホのキーボードにお世話になっている人間からすると、この「記述」は余計に手が痛くなるわ、自分の字が汚いわ、簡単な漢字が出てこないわで、割と大変な目に遭います。小学校の国語の授業をもっと真面目に取り組んでおけばよかったと20年越しに思い知らされます。

そのあと作図に移って、定規やシャーペンを使って、手描きでA2用紙に作図します。今の建築業界は、図面を描くときにCADソフトをつかってパソコン上で描く場合がほぼすべてなので、仕事で慣れているCADではなく手描きでA2サイズの大きい用紙に作図をするというのは本当に大変です。シャーペンや消しゴムを何種類も用意して、どデカい平行定規や三角定規を使って線を引き、線を消すときは細心の注意を払って消す作業は、気力も削れるうえに、腱鞘炎の一歩手前まで手を痛めることもあります。ほんと普段使っているCADソフトがどれだけ有り難い存在なのかを身に染みて感じます。

作図は2時間半を目安に終わらすようにと言われますが、まあそんな時間で終わるのは稀です。普段の課題をこなすときも、本試験の時も、試験時間ギリギリか、描き切れなかった場合の人がほとんどです。作図の最初は基準線を引き、その後に柱を描くのですが、3.5㎝角の四角(柱)を90個近くも時間に追われながら死ぬ気で描き続けるのは二度としたくない作業です。

設計製図試験は「人生で一番短い6.5時間」なんて言われていますが本当にその通りで、1課題終わるころには日も落ちて、心も体も満身創痍ですが、体内時計だけはAM11:30って感じでした。毎週学校へ通う日の昼ごはんはいつも20時です。

 

製図1年目は不合格でした

ちなみに設計製図試験一年目は不合格でした。

その不合格の原因ですが、要求された面積が「1㎡」足りなかったことみたいです。今でも忘れませんが、「空調機械室」という部屋を「50㎡以上」設けないといけないところ、実際作図した図面は「49㎡」になっていました。要求が「約50㎡」なら許されましたが、「以上」と付いていれば最低50㎡は必ず必要でした。「7×7=50」が正解の世界線なら僕はその年に合格していましたが、現実の国家試験はそこまで甘くはなかったです。でもたかが製図用紙の1マスが有るか無いかだけで、じゃあまた来年も時間や労力を使って頑張ってね♪   は心がバキバキに折れるくらい辛かったです。僕以外でも「防」の文字一つ書き忘れて、法令違反で一発outの人間も普通にいました。

なんとか落ちたショックから正気に戻って、今年こそはと思って本腰入れて勉強をし始めるんですが、その年に女優の田中道子が一級建築士に合格していて、そのことがテレビやニュースなどで出ているのを見てしまうと、羨ましいやら、妬ましいやらで、まあ心の中で舌打ちしてました。でも一級の製図試験をしてる人は、割とみんな殺気立っているので、そういう感情になっていたのは僕だけではないはずです。イライラしている時ほど隣の芝生は青く見えてしまうものなんです。でも田中道子は浜松出身の人で、自分と同じS学院に通っていたと知ってからは普通に尊敬の念に変わって勉強をしていました。

 

合格の年

それで去年のGWあたりからまた勉強の日々が戻ってきたのですが、この年はほんとに資格の学校で一緒に学んだ人たちに恵まれました。他の工務店や大手ハウスメーカーの設計職の人たちばかりでしたが、同年代の人も多く、自然と仲良くなって、お互い切磋琢磨しながらも情報を共有しあったり、一緒にご飯や呑みにも行ったりすることが出来たので、それだけでもいい思い出になりましたし、それがあったからこそ一級建築士試験を乗り越えられたんだろうなと今では思います。

あと学生時代から使っていた製図台が途中で壊れ、それから2年も自身の製図台を貸してくれた会社の後輩と、30㎝の三角スケールをずっと借りパクしても怒らなかった同期には本当に感謝しています。

最後の最後で北側斜線制限の予想を盛大に外して、試験当日に僕ら受講生に面食らわせてくれたS学院さんにはもうちょっと文句を言いたいですがね笑。

それでこの前の10月に県立大学へ緊張しながら製図台を担いで試験を受けに行きました。当日はやりきった感と開放感に満たされながらルンルンで帰ってきたのですが、後の自己採点で一か所すごくグレーな部分が出てきてしまいました。上げてから落とすパターンってやつです。その時点では本当に良いとも悪いとも言い切れないものでしたが、実際それを採点官がどう判断するのかは合否が出るまで分からないので、試験が終わって合格発表の12月末までの約3ヶ月ほど、何とも言えない気持ちで過ごすことになりました。試験が終わってしまえば、後は合格発表まで神様にお祈りすることしかできないので。

昨年の1㎡の悲劇のトラウマも残っていて、しかもそのグレーな部分と言うのも単なる凡ミスのようなものだったので、試験当日に課題が想像以上に早く終わってしまい、最終チェックをしても30分程度余ってしまって暇だからと、無駄にテラスの植栽にw草wを描き生やしていたあの時の自分をひっぱたきたい気持ちになっていました。

結果的に採点官はその部分については許してくれて、事なきを得られたので本当に良かったです。

合格発表の日は、発表サイトがアクセス集中でサーバー落ちしてしまい、なかなかサイトに入れない中で、なんとか合格者の受験番号一覧のページに入って画面が表示された瞬間の失神しそうな緊張感は今でも忘れません。

 

最後に

世の中には一級建築士試験を8年、9年挑戦している人や、製図試験を学科試験免除の3回目まで受けて落ちてしまった人も当然のようにいる中で、自分も「何年たっても合格できず、今までの努力が全て無駄になるのではないか」と不安に思いながら勉強をして、なんとか合格して免許を貰えるところまで来れたので、結局合格まで4年かかりましたが、4年分の努力が無駄にならず成果としてカタチになって本当に良かったなと思います。思い返してみると将来自分が名古屋の大学へ進学して、静岡で就職して、浜松の資格学校へ通って、静岡で一級建築士を取得するなんて、小さいころは微塵も想像していなかったなとしみじみ思います。あの頃は一級建築士試験がこんな血反吐を吐くような試験だとは思いもしませんでした。

 

二度としねぇわあんな量の勉強。( ゚д゚) 、ペッ

 

と言っても合格してしまえば、今までの一級の試験勉強はもう過去の出来事って感じです。誰かも言ってましたが、今は「いい人生経験だったわw さようなら一級建築士試験… ~ Fin ~ 」って気分です。

父も一級建築士を持っていて、子供ながらに自分も一級建築士になりたいなと漠然としたミーハーな気持ちでずっと過ごしてきて、建築学科を卒業して仕事をしながら勉強をして、やっと今年長年の夢が叶った訳ですが、正直なところ免許証が来ても自分が一級建築士になった実感はあんまり湧いてません。でも何はともあれ合格できて本当によかったと思う今日この頃です。一級建築士になった以上、これからは資格に恥じぬように精進していきたいと思います。

 

難関国家資格合格を盾に会社のブログに好き放題書いてきてしまい色々と申し訳ありませんでした。

ご清覧いただきありがとうございました。

 

 

 

葛原 優太

投稿者: 葛原 優太 一級建築士

2023年建築士試験に合格し、現在は「一級建築士」として確認申請や省エネ計算などの設計業務を担当しいる。 スタッフ紹介

  • 注文住宅レポート
  • 完成見学会・イベント情報