採光とは
住宅の快適な住環境を考える上では「採光」というものが大切になります。
「採光」というのは太陽光などの自然光を窓などを通じて屋外から屋内に取り入れ、建物内の環境を整えることを言います。
そんな「採光」について簡単に書いていこうと思います。
採光が必要な部屋
住宅を含めた様々な建物には「居室」と分類される部屋があり、その「居室」には原則的に窓等を設けて一定以上の自然光を取り入れられるようにしなければならないと法律によって義務付けられています。
居室というのは「居住、作業、娯楽などの目的のために継続的に使用する室のこと」であると建築基準法で規定されていて、住宅の場合で言うとリビングや寝室、書斎などの部屋が「居室」に当てはまります。
逆に浴室や洗面所、トイレや納戸などは「居室」には当てはまりません。
リビングや寝室などの、人が長い時間滞在するであろう部屋には快適性のほか、人の健康の為、もしくは災害時の避難の為に採光に関する決まりがあるという事になります。
法律上の決まり
「一定以上の自然採光を取り入れる」という事は「どの位置に、どのくらいの大きさの窓を設けるか」という事で、それを決めるための基準も建築基準法によって定められています。
「必要採光面積」という基準の面積と、「有効採光面積」という実際の窓と取付位置によって値が決まる面積があり、この「必要採光面積」よりも「有効採光面積」が大きくなっていれば法律上OKという事になります。
住宅の場合だと、「必要採光面積」はその部屋の床面積の7分の1の値、「有効採光面積」は実際の窓の面積に「採光補正係数」という係数をかけた値となります。
採光補正係数
「有効採光面積」を求める為に必要な「採光補正係数」ですが、これは様々な要因によって数値が異なります。
まず建物を建てる地域によって変わります。用途地域と呼ばれる建物の用途に応じて決められるエリア分けがあり、どの用途地域のエリアに建物を建てるかによって、用いる採光補正係数の算定式が異なります。
住居系地域:採光補正係数=(D/H)×6-1.4
工業系地域:採光補正係数=(D/H)×8-1
商業系地域・無指定地域:採光補正係数=(D/H)×10-1
用途地域は大きく分けて「住居系地域」「工業系地域」「商業系地域・無指定地域」があり、住宅などを建てることが主目的になる「住居系地域」では他の地域と比べてより高い住環境を確保する必要があるため採光補正係数の値が小さく、採光の基準が厳しくなっています。
次に算定式内にある「D」と「H」についてです。
Dは窓のある位置の「軒先から隣地境界線までの距離」になります。この値が大きい(建物と境界との間が広い)と採光補正係数の値も大きくなり、採光について有利になります。(窓前の空間が広いので自然光が入りやすい)
Hは窓のある位置の「軒先から窓の中心までの高低差」になります。この値が小さい(窓が高い位置にある)と採光補正係数の値も大きくなり、採光について有利になります。(建物の高い位置の方が自然光が入りやすい)
つまり「有効採光面積」というのは①実際の窓の大きさ、②その土地の用途地域、③隣地境界線までの距離、④取付高さ(屋根からの高さ)によって変わるという事になります。
そのため、仮に寝室に大きな窓を取り付けたとしても、基準の厳しい住居系地域の建物で、隣地までの距離が近い3階建ての1階にその寝室があれば、法律上はその窓では寝室の採光の規定を満たせない事もあります。
日当たり
法律で決められている採光の基準を満たしているからと言っても、必ずしもその部屋の日当たりが良いという事ではありません。
計算上は採光を確保できているとしても、隣地に数階建ての建物等があれば日当たりがあまり良くないということがあります。
逆に計算上は採光の基準を満たせていなくても、隣地が広い更地等で自然光を遮るものが何も無ければ日当たりがとても良いという場合もあります。
また採光の基準は方角関係なく適応されるため、直射日光があまり入らない北側の窓についても計算によって採光の確保を確かめなければなりません。
最後に
明るさや光というと蛍光灯やLED照明などの人工的なものを一番に考えがちですが、窓から入る自然光も大切です。
自然採光は人体にも影響を与えるとされていて、朝日などの光によって体内時計がリセットされて質の高い睡眠や目覚めを得ることが出来たり、屋内のカビなどの発生を抑制したりする効果もあるそうです。
また明るく温かい太陽光が部屋へ入ることで照明や暖房等の光熱費を節約することにもつながります。
快適な空間をつくるための自然採光にも意識を向けてみると以外と面白いかもしれません。