江戸間と京間

タタミ

昔からの日本の伝統的な建築材料に「畳」があります。

近年では和室のない建物が増えてきたことで畳を使用している建物が減ってきていたり、畳を使っていても本来のイグサという素材ではなく、和紙で出来た製品を使う場合が増えてきていて、本来の畳を見かける機会が少なくなってきているのかなと思います。

 

モジュールとしての畳

ただ今でも建築用語で「◯畳(帖・じょう)分の広さ」と言うように、住宅の大きさ(面積)を表す一つの基準として、「畳」を用いる場面が多くあります。昔から使われている日本古来のモジュール(基本寸法)の一つです。「1坪(つぼ)」も「1坪=2畳(畳2枚分)」の大きさなので畳が基準になっています。

大学時代に教授から聞いた話で、知り合いの外国人建築家から「日本では家を建てる時の基準に「畳」という基本寸法があって、それを何枚分組み合わせていくかで建物をつくれるのが羨ましい」と言われたというのがあります。西洋では何かを建物の基準としようとすると「レンガ」くらいになってしまうそうです。現代の住宅で言うとトイレは1畳分、お風呂は2畳分のスペースを確保すれば部屋として成立するというような感じです。

現在の建築業界で大きさの単位として使われている「1畳」の大きさは基本的には「910㎜×1820㎜(=1.82㎡)」が標準になっています。尺貫法での「3尺×6尺」をメートル法に直して、キリのいい数値に修正したものです。

そんなメートル法なぞ存在していない頃から令和の現代まで、大きさの単位として使われている畳ですが、実は昔の名残として西日本と東日本とで1枚の畳の大きさが違うことがあります。

 

江戸間(関東間)

「江戸間(えどま)」は主に関東地方や東北地方などの東日本地域で使われる畳の事です。

「江戸間」のほかにも「関東間」や「田舎間(いなかま)」という呼び方もあります。また他にも長辺の長さが「5尺8寸」であることから「五八間(ごはちま)」と呼ばれたりもします。

畳の大きさは「880㎜×1760㎜」でやや小さいサイズになります。

 

京間(関西間)

「京間(きょうま)」は主に京都周辺の関西圏、中国地方や四国地方などの西日本地域で使われる畳の事です。

「京間」のほかにも「関西間」や「本間間(ほんけんま)」などの呼び方もあります。

畳の大きさは「955㎜×1910㎜」で、長辺の長さが「6尺3寸」になります。そのため一枚当たりの大きさが江戸間よりも大きくなります。

 

なぜ大きさが違う?

江戸間と京間で畳の大きさが違う理由ですが、これはそれぞれ建物を建てた時の工法の違いが要因なのだそうです。

京都の建物の場合、町家などの狭い家が多くなり、狭い家を合理的に建てるために、畳を先に敷いてから柱を建てる「畳割」という室町時代の工法を採用していました。

その後、江戸時代になってから工法の効率化を図るため、先に柱を建てて骨組みを構成し、それから内部に畳を敷いていく「柱割」という工法が出来たことで、京間と江戸間という違いが出来たそうです。

畳が先か、柱が先かという違いから、畳の大きさが柱の内々寸法なのか、柱芯寸法なのかの違いに繋がってくるようです。

その他の和室

江戸間と京間以外にも色々な種類の大きさがあり、代表的なものでは「中京間」や「団地間」などがあります。

「中京間」は愛知県や岐阜県などの中京エリアで主に使用されているもので、「910㎜×1820㎜」の畳の大きさになります。北陸や東北の一部地域、また沖縄などでもこの中京間が使用されたりもするそうです。大きさが「3尺×6尺」なので「三六間(さぶろくま)」とも呼ばれます。

「団地間」は名前の通りで、団地などの集合住宅によく使われているもので、「850㎜×1700㎜」の畳の大きさになります。戦後の人口増加による住宅不足に対応するため、多くの集合住宅で使用できるコンパクトな畳サイズとして普及したものなのだそうです。長辺が5尺6寸なので「五六間」と呼ばれたり、公団住宅でも使われるため「公団間」とも呼ばれています。

ちなみにそれぞれの畳の大きさの順は「京間 > 中京間 > 江戸間> 団地間」となります。

なんとなく昔から全国一律で同じサイズだと思っていた「畳」が、実は地域や時代によって異なっているのは、やはり不思議な感じがします。

おまけ 単位の基準

少し脱線しますが、単位について少し調べて知りましたが「1尺(尺貫法) 」≒「 1フィート(ヤーポン法)」なのだそうです…(゚ロ゚*) 。どちらもメートル法に直すと「≒0.30m」なんです。

ただこれは完璧な偶然の一致ではなく、尺貫法とヤード・ポンド法のどちらも「人の足の大きさ」を基準に長さの単位をつくったという由来から、2つが似たような長さになったというのが定説なのだそうです。

畳が「起きて半畳、寝て一畳」ということわざにも使われて、日本人の生活スペースを表現しているように、世界のいろんな単位も実際の人々の生活から発展して今の大きさの基準になっていったのかなと感じたので書いてみました。

もし仮に、靴箱の奥行を聞かれることがあったなら、「30㎝」ではなく「1尺」や「1フィート」と答えると…..まったくかっこよくないですね……

 

 

葛原 優太

投稿者: 葛原 優太 一級建築士

2023年建築士試験に合格し、現在は「一級建築士」として確認申請や省エネ計算などの設計業務を担当しいる。 スタッフ紹介

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