はじめに
以前、「江戸間」と「京間」という地域ごとの畳の大きさの違いについて書きましたが、その際に畳の置き方にも色々と種類があるという事を知りましたので、今回それをご紹介したいと思います。
祝儀敷き
「祝儀敷き(しゅくぎじき)」とは、一般的に住宅の和室などでよく用いられる畳の置き方で、畳同士の合わせ目が十字にならないように敷くと縁起が良いとされた江戸時代からの風習の名残です。
畳の枚数に関わらず、それぞれの畳の四隅が1か所に集まらないように、畳の向きをあえて違う方向にして配置した畳の置き方になります。
また祝儀敷きは「枕敷き(まくらじき)」と呼ばれることもあるそうです。
不祝儀敷き
「不祝儀敷き(ふしゅくぎじき)」とは、先ほどの「祝儀敷き」とは反対に、縁起の悪いとされる畳同士の合わせ目が十字になるように配置した畳の置き方です。
祝儀敷きとは違い、それぞれの畳の向きを合わせた置き方が特徴で、主に葬式などを行う寺社仏閣や、不特定多数が利用する旅館の大広間などで利用されています。
旅館などの大広間については、縁起の良し悪しと言うよりも、大空間かつ大人数が利用する空間のため、畳の補修などのメンテナンス性を優先させたからという側面が大きいようです。
鬼門半畳・切腹の間
4畳半のような「半畳」が発生する和室の場合、半畳が「鬼門(北東)」の方向に来るような敷き方は避けたほうがよいというものがあります。これは「鬼門半畳」とよばれるもので、「欠け」を意味する半畳の畳を、鬼の出入りする門とされる鬼門の方角に配置してしまうと、そこが鬼の通り道となってしまい縁起が悪くなるからだそうです。
また4畳半の和室の場合、半畳の畳を中央に配置し通常の大きさの畳をその周囲に配置するレイアウトがよく見られます。これは見栄えも良く、鬼門半畳も避けられるレイアウトですが、半畳の周りに置く畳を「卍」の形になるように配置してしまうと「切腹の間」と呼ばれるものになります。
この形は武士が切腹を行う際に使用していた畳の置き方になるそうで、これもまた縁起が悪いと言われています。そのため半畳の周囲に畳を置く場合は、茶室などでも使われている、卍と向きが逆になる配置のレイアウトとするのが良いそうです。
床の間
最近の住宅ではあまり見かけることは無くなりましたが、床の間のある和室の場合では、床の間に接する畳は、畳の長辺が床の間と平行になるように置くのが良いとされています。
床の間に対して畳の長辺が直角になるように配置することを「床刺し」と呼び、このような配置にしてしまうと、床の間の前にある上座部分に畳の縁が来てしまい、お客さんが上座に座る際に畳の縁を踏んでしまう事になってしまうため、このような「床刺し」は避けられることが多いようです。
市松敷き
琉球畳のような「縁のない正方形」の畳を使っている和室でよく見られる畳の置き方に「市松敷き」というものがあります。
比較的新しい住宅でよく見かけるこの置き方は、畳の目を縦と横に交互になるように正方形の畳を敷くことで、光の当たり方の違いよる色の見え方の違いを利用して、畳の色に濃淡があるように見せる方法です。
最後に
今まで畳の置き方についてあまり深く調べたことは無かったのですが、畳の置き方一つで、こんなに様々な種類の置き方や名前・由来があるというのは凄く面白いことだなと感じました。
「畳は必ずこの置き方にしなければならない」という決まりはないと思いますが、こういう考えか方もあるんだなと頭の片隅にでも入れておくと、内装のデザインを考えるときに少しでも役に立つかもしれません。