持ち家VS借家 どっちが得なの?

様々なところで議論されていますが、決定的な結論が出ないテーマを取り上げてみました。

まず、一般論、総論で

一般的に、サービスや商品の価格は需要と供給から決まります。

例えば、持ち家とか借家というのは供給側ですよね。そして需要は、みなさん、住む側です。だから、家の値段や家賃は、大家さんと皆さんが決めているということになります。分かりやすく言うと、もし持ち家の価格が暴落して家賃の10か月分になればみんな買っちゃいます。そうすると、借家は借り手がいないので賃料をどんどん下げていきます。一方、持ち家は高くしても売れるのでどんどん値をあげていきます。そして、どこかでバランスがとれます。バランスがとれるということは、持ち家のほうが得なのか、借家のほうが得なのか住む側が迷ようになるということです。

これが需要と供給の法則です。だから、いつまで経ってもどっちが得かの論争が続くということです。

次に、前提条件を具体化してみます

分かりやすくするために、持ち家と借家とで前提条件を揃える必要があります。例えば郊外の一戸建てと都会のアパートを比べると争点が混乱してしまいます。

同じ郊外の一戸建てを比較するとしても、間取りを自分で決めた注文住宅とそうでない建売住宅とでは差は大きすぎて、これからの議論を複雑にしてしまいます。

ですから、今後の議論は、同じ住宅会社が同じ分譲地内に建売住宅と借家を建てたと仮定します。建設地は掛川周辺とします。

持ち家のメリットは自分のモノであること

、持ち家は、ローンが終わると自分のものになるのが一番のメリットです。(ローンが終わるまでは金融機関の抵当権が設定される)例えば、建売が2500万円とします。これを固定金利1%30年払いのフルローンで借りると、ざっくり毎月8万円の返済となり、総返済額は2880万円になります。一方、借家は一生賃料を払い続けなくてはなりません。同じような家を借りる場合は、最初の賃料は月10万円くらいだと思いますが、徐々に古くなるので、30年間で均すと毎月の返済額は8万円平均くらいとします。そうなると、どちらも毎月8万円かかるということになります。

ここから細かく見ていきましょう。

両方とも毎月8万円を払い続けると、持ち家は30年後にローンが終わり100%自分のものになりますが、借家は大家さんのもののままです。でも、持ち家の場合のメンテナンスコストを自分で支払わなくてはなりません。以前計算したことがあるのですが、一般的な家だと毎月1万円の積み立てが必要になります。借家の場合は修繕費が大家さん持ちとなりますから、持ち家のほうが30年で360万円出費多くなります。

この条件だけで考えると、「持ち家は360万円余分に払うことで30年後に自分のものになる」という答えがでます。

持ち家の場合は、もう一つ固定資産税という出費があります。ざっくり月1万円くらいは掛かります。しかし、今は住宅ローン減税というのがあって、10年間は年末のローン残高の1パ-セントは税金が還付されるため、10年間でざっくり200万円ほど戻ってきます。だから、議論を簡易にするために、固定資産税は還付金でほぼ相殺されることにします。

かなりややこしくなってきましたね!

借家なら新しい物件に引っ越しできる

しかし、年を取ってくると保証人や保証会社が付けられなくなってしまう恐れがあります。借家だと、もし途中で働き手が亡くなってしまったときには、月々の返済を抑えるため住まいをグレードダウンしなくてはなりません。これが持ち家なら団体信用生命保険に加入しているので、残りのローンはゼロになります。

それにしてもローンを背負うのは荷が重いという人がいます。今の時代、終身雇用が約束されているわけでもないし、いつリストラされるか分からない。年金も当てにならない。だから、持ち家やローンはリスクだという人もいます。しかし、先ほど話したように借家であっても家賃はローンと同じ額が掛かかります。30年後のことを考えたらローンも家賃もかからない持ち家のほうがリスクヘッジになるという考え方もできます。

住宅ローンがあると、転職や独立、新たなチャレンジがしにくくなるという人もいますが、持ち家でも借家でも一定の住居費は掛かるので、それは気持ちの問題だと思います。

 

 

持ち家は家に縛られる?

持ち家だと、家族をとりまく環境が変わったときに家に縛られてしまうというリスクについてですが、これは確かにあります。転勤で泣く泣く一人単身赴任したり、マイホームを他人に貸すというケースもあります。今、一番のリスクは離婚です。例えば4人家族だったから大きな家が必要だったのが、家族が二つに分かれてしまえば大きすぎる家になってしまい、住宅費が過剰になってしまいます。一般的に離婚は生活のレベルを落としてしまいますが、それ以上に、ココロを大切にした結果の選択なので、これは難しい問題ですね。ただし、マイホームやローンの存在が家族間の問題を乗り越える糧になったという話も聞きますので、持ち家の場合はがんばってもらいたいです。

次に、これからの移動手段が車や電車から全く別のもの、例えば空を飛ぶドローンのようなものになったら、駅近とか交通の便は必要なくなるから、自由に住まいを移動できる借家のほうがいいという意見についてです。確かに、未来にそうなるかもしれませんが、だったら借家じゃなくてホテルでいいと思います。一つ持ち家をもって、そこを拠点にリモートワークやホテル住まいをするというスタイルです。電車が世の中から消えると、駅近である必要はなくなりますが、政府のスモールタウン構想では、人々を駅周辺に集める方針なので、この先も駅近が人気なのは変わらないでしょう。

なかなか決定な差が出ませんね。

持ち家は引っ越せないという前提を外してみる

では、持ち家と借家を10年ごとに住み替えるとして、考えてみましょう。

2500万円の家を、先ほどと同じ固定金利1%30年払いのフルローンで買ったとすると、10年後の残債は1750万円。ということは1750万円で売れれば、毎月8万円の借家を借りていたのと同じと言えます。1750万円以上で売れれば持ち家でよかったとなるし、1750万円以下なら損したということになります。

掛川周辺だと、2500万円でかった建売住宅の相場は1500万円くらいなので、この場合は損したということになります。でも、日本でも土地が値上がりしている例えば沖縄などのエリアだったら買った値段以上で売れるかもしれません。

ただし、ひとつ注意点があります。日本の場合、建売住宅であっても買った1年後に転売しようとすると、たぶん2割くらいは値が落ちますので、2500万円で買ったとしたら1年で500万円値落ちするとおもってください。

 

結論

以上から、土地や家の需要が伸びている地域では持ち家が得、そうでない地域では借家が得というのが結論です。

そして、ここが大事なのですが、この種の議論は、物価がデフレのままという想定でしていますが、この先インフレになるかもしれません。もし10年後にインフレになって物価が倍になれば給料も倍になります。そのときには、借家の賃料も倍になりますが、ローン返済額が元のままなら、ラッキーということになります。

そして、裏技ですが、どうせ自分でデザインできない建売を買うのなら、最初から中古住宅を買ったほうがいいと思います。先ほどの例のように築浅というんですが、完成後2年とか3年の中古住宅はすでに値が2割下がっているのでこれを狙えば、転売のときの寝落ちを抑えることができます。

 

 

 

今回は建売という前提でしたが、注文住宅だと全く土俵が違うため、別の結論になるかもしれません。それは次回お話ししたいと思います。

 

斎藤元志

投稿者: 斎藤元志 創業者

ウィングホーム株式会社の創業者であり、現代表。自らを「断熱バカ」だと揶揄する一面も。 スタッフ紹介

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