マズローの欲求段階説を家づくりに例えてみた

アメリカの心理学者マズローは1943年に欲求段階説を発表しました。人間の欲求には段階があって、下層の段階が満たされると一つずつ上層の欲求に移行していくという説です。

以前は、この段階説を「間取りセミナー」で仕事や家づくりに例えて紹介していたのですが、最近はほかに話す内容が多くなってしまい、省略せざるを得ない状況が続いていました。

 

 

一番下は生理的欲求

生理的欲求とは、生きるために最低限必要な欲求です。睡眠、食事、排せつ、性、そうそう空気も欲しいですね。

仕事に例えると、喰うために働く。その日暮らしとなります。

これを家づくりに例えると、とりあえず雨風しのげればいい。家は安ければ安いほどいい、という要望になります。

 

次は安全の欲求

安全の欲求とは、身体や身分の安全(拘束、支配されないこと)、精神の安全(不安や混乱しないこと)、法や規律で守られていて、安心できることです。

仕事に例えると、安定した定職があり、欲しいもののために働いている状態となります。

これを家づくりに例えると、家族の生命財産を守ることが目的となります。耐震性、耐久性、断熱性などの構造・性能を高めることが重要です。(構造セミナーで詳しく説明しています。)

生理的欲求と安全の欲求は「物質的欲求」に分類されます。物質として目に見えるものを欲しがる欲求です。

 

 

所属と愛の欲求

ここから先は、「精神的欲求」に分類されます。

所属と愛の欲求は、独りぼっちではなく、共同体に所属することで満たされる欲求です。家族や仲間と暖かい関係性でありたいと願うことです。

仕事に例えると、社会的役割を感じながら働き、会社の一員であることで安心できる状態です。

家づくりに例えると、「家を持って初めて一人前だ」と昔は言われていましたが、この段階にあるのだと思います。

 

 

承認の欲求

承認の欲求とは、認めてもらいたいということ。自分に自信を持ちたい。他人から評価されたい。地位や名誉が欲しい。このような状態です。

仕事に例えると、業界やまわりの人に認められるために頑張っている状態。仕事を通じて自信をつけている状態。

家づくりに例えると、まわりの家に見劣りしたくない。目立つデザイン。承認欲求が満たされてくると、自分らしい家や自分の好きなデザインを追及するようになります。

 

 

自己実現の欲求

自己実現の欲求とは、自分が何者であるか理解し、より自分らしく在ろうとしている状態です。この段階にくると「利他欲求」となります。つまりFor youの状態であり、他人の評価や見返りは不要となります。一方、これより下の4層の欲求は全て利己欲求です。欲しがるから他人に左右されてしまいます。

自己実現の状態を仕事に例えると、自分の能力を相手のために使い、それをより高めている段階です。「成長と貢献」の世界で働いている状態とも言えます。このステージで仕事をすると毎日が幸福感で満たされます。

家づくりに例えると、代々受け継がれてきたモノの継承。新たな実家づくり。自分と家族の成長のステージなど、抽象度が上がっていきます。また、家そのものだけでなく、家づくりの過程を通じて、家族がお互いの人生観を再認識したり、家族の絆を深めあうこともこのステージにあたるのでしょう。

 

 

 

マズローは後年、さらに上層の欲求を発見した

それを愛と表現する人もいるし、至高体験(自己実現が満たされている感動状態)と表現する人もいます。抽象度が高くなりすぎて私には正しく表現できるかどうか分かりませんが、ここから先は私見としてお読みください。

本当に幸せなことですが、ウィングホームのスタッフは、月に数回、この至高体験を経験しています。それはお引渡しなど、家づくりの大きな節目のイベントのときです。私は「言葉がいらない感動のなかにいる状態」と呼んでいます。そこでは参加者全員の魂がつながり、日常では味わえない連帯感、集中力、幸福感に包まれます。いわゆるフロー体験なのだと思います。会議のときに同様の体験をすることもあり、この時間をとても大切にしています。

この至高体験をしている時間は数分なのですが、普段の時間の1万倍くらい密度の濃い時間に感じます。

また、ウィングホームの基本方針に、「日本一、愛と勇気を分かち合う工務店になる。」という文言がありますが、愛と勇気の状態にいることも同じ状態なのだと思います。

 

 

「なにごとも基礎が大事」

先述したとおり、家づくりで必要なポイントにはいくつかの段階があります。
今の家はどの家も安心だと思い込んで、下層の欲求、特に「安全の欲求」をなおざりにして、上層の欲求だけに目を奪われてしまうと災害のときに大きな後悔をすることになってしまいます。

人生と同様に、家づくりでも下から順々に満たしていくべきです。

なにごとも基礎が大事ですね。

 

 

 

斎藤元志

投稿者: 斎藤元志 創業者

ウィングホーム株式会社の創業者であり、現代表。自らを「断熱バカ」だと揶揄する一面も。 スタッフ紹介

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